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フランスのバターの基礎知識

フランスのバターの種類
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フランスでは料理にもお菓子にもたくさんのバターが使われています。フランスではバターがない生活なんて考えられません。

ですが、現在フランスはバター不足です。スーパーには全くといっていいほどバターがありません。

今回は、フランスのバター不足の原因を紹介するとともに、日本とはちょっと違うフランスのバターの基礎知識と種類を解説します。

フランスのバターの基礎知識

フランスのバターの種類

続いては、フランスのバターの選び方について。今後バター不足が解消して、バターを選ぶ際に迷わず選んでいってください。

わたしがフランスに住みはじめた当初、乳製品の種類が多いし、なにを選んでいいのか分からなかったです。フランス語も直訳してもよく分からい専門用語だったりするし。

フランスに住みはじめたばかりで、わたしのようにスーパーやマルシェの乳製品がよく分からないっていう方もいらっしゃるのではないかと思います。今回は、フランスのバターについて知っておきたい基本的なこと、バターの種類について紹介します。

バターの成分

当たり前ですが、バターは牛の乳から絞った牛乳から作られます。チーズは山羊や水牛などから作られることもありますが、バターは一般的に牛だけです。

  • 脂質:乳脂肪分が最低でも82%含まれる
  • 水分:最大16%
  • ラクトース・カゼイン:最大2%
  • ビタミン:A, B, D

バターは1kg作るのには22リットルの牛乳が必要です。1kgのクリームは10リットルの牛乳で作れます。

バターには2つの季節がある?

バターには、夏のバター le beurre d’été冬のバター le beurre d’hiver と2つの季節をもっています。

夏のバターは温度にとても影響されやすく、28℃〜32℃で溶けてしまいます。一方、冬のバターは水分が少なめで、溶ける温度は夏のものよりも上がって32℃〜35℃の間です。

ちなみに、バターを熱して120℃になると危険で、200℃に達すると発がん性の物質が発生します。そこまで高温で熱することはないと思いますけど、焦げすぎたバターは口にいれないようにしましょう。

バターの種類

一般的に手に入れることができるバターの種類を解説します。バターの紙袋に書かれているフランス語表記の内容です。

ちなみに、フランス語でバターは Beurre(ブール)と書きます。

Beurre cru

cru とは「生の」という意味です。生のバターということですので、殺菌していない生乳や生のクリームから作られたバターのこと。2℃〜4℃で6〜8週間保存できます。

Beurre fin

fin とは「上質な、純粋な」という意味です。殺菌したクリームから作られたバターのこと。クリームは最大30%は冷凍したものが含まれます。2℃〜4℃で60日間保存できます。

Beurre extra-fin

extra とは「特別なこと」を意味します。上記の Beurre fin よりも特別良いものということですね。

こちらは冷凍していない殺菌したクリームから作られたバターのこと。牛乳かクリームを収集してから72時間以内、クリームを分離してから48時間で作ります。2℃〜4℃で60日間保存可能です。

お菓子を作るのに適しているバターですので、お菓子作りをする際におすすめのバターです。

そのほかのバター

Beurre allége:低脂肪のバターで、41%〜65%の脂肪分しか含まれていません。

Demi-beurre:本来のバターの半分の41%しか脂肪分が含まれていないので、demi(半分)っていいます。

Beurre demi-sel:0,5%〜3%の塩分が含まれている塩気のあるバターです。日本の有塩バターが1%の塩分ですので、ちょっと塩気が強いバターもあります。

フランスのバターは塩分が含まれていないのが一般的で、入っていないものは何も書かれていなかったり、doux と表記してあります。

わたしがおすすめする美味しいバター

わたしがおすすめするバターは2つ。フランス産と日本産のバターです。

まずは、フランス産のAOPマークのついたポワトゥ・シャラント地方特産の有名なバター LA VIETTE(ラ・ヴィエット)。フランスでもAOPマークのついたバターは美味しいと有名ですね。

このバターは、搾乳して72時間以内に牛乳を生クリームにするところから作りはじめ、15時間かけゆっくりと熟成させるという伝統的な方法で作っています。できあがりのバターはとても繊細で、少しだけノワゼット(ヘーゼルナッツ)の味がして、フルーツのようなやわらかな香りがします。

パンやお菓子の材料としての相性がよく、ほかバターよりも早く溶ける特徴があることから、パイ生地の材料として使うのがおすすめです。

購入はこちらからできます(富沢商店&クオカ)
冷凍 ラヴィエット無塩バターAOP / 500g



*AOP(Appéllation d’Origine Protégée)という1992年に生まれたヨーロッパの原産地保護呼称のことです。商品の原産地を保証するもので、気象条件、日照、植生、元祖伝来の飼育や生産法などの地域特性が生産品に反映され、その生産品が該当する地域で正当に生産されたものであることを証明する制度です。[ 参照:http://jp.france.fr/ja/news/53124 ]

もうひとつは日本産でよつ葉の発酵バターです。こちらも有名ですね。先に紹介したフランスのバターと同じ製法で作られた発酵バターです。北海道産の牛乳をクリームにして乳酸菌を加えて作ります。

発酵バターでクッキーやパウンドケーキなどの焼き菓子、タルト生地を作るとバターの芳醇な香りがします。発酵していないバターと比べるとぜんぜん違います。フランスのバターは発酵バターですので、フランスのお菓子が美味しい理由のひとつが発酵バターかもしれませんね。

購入はこちらからできます↓(Amazon)

よつ葉 発酵バター 450g (食塩不使用)

ぜひ、美味しい焼き菓子を作りたいときにはお試しください。

フランスのバター不足のほんとの原因

フランスのバターの種類

フランスでも現在(2017年11月現在)バター不足が起こっていて、ほとんどのスーパーにはバターが全くありません。バターの棚ごとなくなっているんです。本来のバター売り場のところでがっかりしているフランス人がたくさんいます。当然、わたしも。

代わりにマーガリン系の商品が並んでいるんですが、代替品ってほんとにマズいので、早いとこバター不足が解消してほしいものです。

ということで、フランスのバター不足の原因についてまとめてみました。フランスの新聞ル・モンド(le monde)を参考にしています。

原因のひとつは世界的なバター人気!

2017年2月以来、1トン当たりのバターの価格が暴騰して、9月に価格上昇のピークを迎えました。2016年4月には1トン当たり2500ユーロ(約33万円)だったのですが、9月には6800ユーロ(約90万円)* に値上がりしています。

*1ユーロ=132円(2017年11月現在)で計算

バターの価格暴騰の原因は、世界的なバター消費の増加です。2017年では2.7%、過去4年間でも7%増加しています。

そのバターの消費が増加した要因は、アメリカで「バターや動物性油脂は健康に有害ではない」っていう科学の研究結果が発表されたことに始まりました。その後、アメリカの雑誌 ”Times” が「バターを食べよう」と訴求したり、マクドナルドがマーガリンをバターに替えるという動きがありました。

これらの動きによって、バターの購買力が刺激され、バターの消費が増えていきました。

アメリカではバターの消費が2017年に8%と急上昇し、中国でも次第に動物性油脂への関心が高まりはじめ、2016年1月〜8月の間に中国へのバターの輸出は46%増加しました。

バターの消費は急増したのですが、世界でのバターの生産は2017年ではたったの2%しか上がっていません。

牛製品の輸出が世界1位のニュージーランドでさえも、乳製品の生産が少し減っています。ヨーロッパでも乳製品の生産は、2015年以降減少に転じ、2016年末からは、飼料の収穫量の減少と厳しい気候条件によりさらに減少しています。フランスではバターの生産が3%減少しました。

なんでフランスだけバターがないのか?

世界的にバターの消費が増大してきたこととバター生産が増えていないことがバター不足の原因になっているのは分かりました。

でも、フランスでは以前よりバターの消費は活発で、しかも酪農大国であるのにもかかわらずフランスだけバターがスーパーの棚から消えたのか。また、酪農大国であり、牛乳やチーズは普通にスーパーに売られているのに、バターだけなぜないんでしょうか。

その原因は、スーパーなどの販売業者と乳牛の生産者との間に問題があります。

毎年2月にスーパーはバターの購入価格をバターの仕入れ先と決めており、その決められた価格はその年の間は固定されます。

2017年2月以来、バターの価格は上がったけれど、スーパーでの販売価格は同じままです。よって、供給業者と販売業者の間に対立が生じます。

生産者にとっては、大量の牛乳を必要とするのにもかかわらず価格が安いバターを作るよりも、チーズや生クリームといったほかの乳製品を生産したほうがいいじゃんっていうことになります。

1kgのバターを作るのに22リットルの牛乳が必要なのですが、1kgの生クリームは10リットルで作れます。生クリームを作ったほうが効率が良いんです。また、高く売れるチーズを作ったほうが儲けれるじゃんってことですよね。

実際にフランスでは牛乳の生産不足はなく、8月末以来、過去5年間の平均を上回っているほどです。

ニュースのインタビューで、乳牛の大生産地であるノルマンディーのマダムが「そこらへんに牛たくさんいるのに、なんでバターだけないの???」って吠えていらっしゃいました。おっしゃるとおり牛乳はたくさん生産されています。

さらに、世界でのバターの価格は9月のピーク以降低下していますし、現在(10月)では6000ユーロ/トン、12月には5000ユーロを下回ると予測されています。

ですので、フランスのスーパーにバターが全くなくなっているのは、乳牛が減少している訳でもなく、牛乳の生産が足りない訳でもなく、単なる生産者と小売業者の小競り合いの結果です。

こうやってお互いが意地をはりだすと収まりにくくなるのが大人の世界ですね。

昨日(11月6日)のニュースでもバター不足はまだまだ収まらないってニュースになってました。

まじで、ほんとによ。

[ 参照: http://www.lemonde.fr/economie/article/2017/10/25/pourquoi-la-france-ne-connait-pas-une-penurie-de-beurre_5205775_3234.html ]

いかがでしたか。フランスのバター不足の原因がただの生産者とスーパーのケンカだったなんて呆れてしまいますが、フランスのバターが戻ってくることを祈ります。バターがスーパーに戻ってきた際には、こちらを参考にしてバターを選んでいただければ嬉しいです。

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