フランスのクリスマスにはたくさんのごちそうやブッシュ・ド・ノエル(クリスマスケーキ)を食べるんですが、そのクリスマスの余韻がなくならないうちにお菓子屋さんやパン屋さんにはガレット・デ・ロワが並び始めます。
先日、クリスマスが終わった翌々日の12月27日に並んでいるのを見かけました。クリスマスで膨らんだおなかを引っ込める暇もない早さ。でも、並んでたら買ってしまうんですよねー。
日本でも少しずつ定着し始めているガレット・デ・ロワというお菓子、1月6日が近づくとお菓子屋さんなどで見かけるようになったのではないでしょうか。
今回は、1月の季節のお菓子ガレット・デ・ロワを紹介していきます。
ガレット・デ・ロワとは?
フランス語でガレット(Galette)は丸い形のお菓子、ロワ(Rois)は王様という意味で「王様のお菓子」という意味です。
ガレット・デ・ロワの歴史
12月25日に馬小屋で誕生したイエス・キリスト。そののことを聞きつけた東方を旅する3人の聖人が、1月6日にキリストに謁見し、贈り物を贈って誕生を祝ったことに由来しているそうです。ご公現(神が公に現れる)をお祝いする日が、「公現祭=エピファニー」です。
そのエピファニーの1月6日にお祝いでガレット・デ・ロワを食べるという習わしができました。
この絵は1774年に書かれたものですが、この時代からガレット・デ・ロワを楽しんでいます。200年以上経った今でも同じようにガレット・デ・ロワを楽しむ習慣が残っています。
ガレット・デ・ロワの種類
ガレット・デ・ロワには2つ種類があります。
1. パイ生地タイプのガレット・デ・ロワ
ひとつ目はパイ生地の中にアーモンドペーストが入っているものです。日本でもフランスでもよく見るのがパイ生地のタイプです。
中身がアーモンドペーストのものが主流ですが、お店によってはりんごペーストが入っている場合もあるんだそうです。リヨンでは、プラリネルージュ(赤いプラリネ)のペーストが入ったものもよく見ます。
店頭には紙で作った王冠が載って並んでいます。
特徴的なのは表面の切り込みの飾りです。様々な切り込みのデザインがあり、それぞれに意味があるんだそうです。
- ひまわり
ひまわりは直線で切り込みが入った格子模様で、「栄光」という意味があります。たしかに、ひまわりの種の部分ぽいです。
フランスのパン屋さんで売っているガレット・デ・ロワのデザインはこのひまわりと呼ばれるものが多いようです。ほかのデザインに比べて簡単に切り込みが入れれるので、人出の少ないお店ではひまわりを使っているのかなって想像しています。
- 太陽
うずまき状のグルグルした曲線は太陽という模様で、「生命力」を意味します。
この模様はどちらかというとお菓子屋さんでよく見かける模様です。曲線を同じような幅で入れるのって手間がかかりますが、パティシエの腕の見せ所です。
- 月桂樹
葉っぱの模様をしたもので月桂樹といい、「勝利」を意味します。
あまりお店では見かけない模様です。というのも、細かい切り込みを入れるので、手間がかかってしまうから作り手側はちょっと躊躇しそうだと思うんです。1月いっぱいはガレット・デ・ロワを大量に毎日作るので、1枚にそんなに手間かけてられないからかなぁって売り手側の意見ですが。
ただ、有名なパティスリーではこのデザインも見かけます。手が込んでますね。
- 麦の穂
麦の形をした細かい線の切り込みがあるのは麦の穂という模様で、「豊穣」を意味します。
これまた細かい線がたくさんあるので作るのに手間がかかるタイプです。そして、なんとなく地味な印象なので店頭ではあんまり見かけないのですが、スーパーではこのタイプもよく目にします。
表面のデザインにもお店の特徴があらわれているよねって思いながらガレット・デ・ロワを選ぶのを楽しいです。
2. ブリオッシュ生地タイプのガレット・デ・ロワ
ふたつ目はブリオッシュ生地のガレット・デ・ロワで、南フランスでよく見られるタイプです。
オレンジ水(オレンジの香りがついた水)を加えたブリオッシュ生地を焼き、表面にドライフルーツを飾ったお菓子です。カラフルなフルーツが鮮やかで南フランスっぽい。
年末に南フランスに行った際には、ブリオッシュタイプとパイ生地タイプの2つともがパン屋さんに並んでましたよ。
ガレット・デ・ロワの楽しみかた
王様になれる日
ガレット・デ・ロワの中にはフェーブ(そら豆)と呼ばれる人形が入っています。今では陶器製の人形ですが、昔はそら豆を使ってたそうです。
フランスではガレット・デ・ロワを1月6日だけに食べるのではなく、1月中に家庭や職場や学校などのさまざまな場面で何度もガレット・デ・ロワを食べる機会があります。何人かたくさんの人と一緒に食べるお菓子です。
ガレットを切り分けて、フェーブが入っていた人が王様(女王様)になって、王冠をかぶり、その日はみんなから祝福されます。
でも実際は、小さい子供がいない限り、あんまり王冠をかぶることはないかなぁって。夢がないですが。もう完全になれてしまってますね。フェーブが当たってもハイハイって感じです(笑)。
フェーブのかたち
お店によってさまざまなデザインのフェーブが入っていることがあります。
オリジナルデザインのものを作っている店も多くあります。わたしが研修していたお菓子屋さんは店の中庭にある古い泉が特徴なんですが、その泉を再現したフェーブを作っていました。
パン屋さんやスーパーのフェーブもかわいくって、世界遺産シリーズや動物園の動物シリーズだったり。シリーズになってたら集めたくなってしまって、そのパン屋さんに通って、お店側の戦略にしっかり乗っかってしまってます。
ガレット・デ・ロワがさらにおいしくなる食べかた
ガレット・デ・ロワはそのまま食べても美味しいのですが、さらにおいしくなる食べかたを紹介します。
- オーブンを170度で予熱する。
- ガレット・デ・ロワを入れ、5分程度温める。
表面が少し温まるくらいで大丈夫です。
オーブンでちょっとだけ温めるだけで、バターの香りが立って、パイ生地がサクサクするのでおすすめの食べかたです。
フランスで食べるガレット・デ・ロワ
フランスではクリスマスが終わった頃から、1月いっぱいガレット・デ・ロワがお菓子屋さん等に並んでいます。1月6日だけのお菓子じゃないんですね。
いつまで食べ続けるのかフランス人に聞くと「お店に並ばなくなるまで」と答え、パティシエに聞くと「お客さんが買いに来なくなるまで」って答えてました。1月いっぱい飽きるまで食べることができます。
ガレット・デ・ロワが売っているのは、パティスリー(お菓子屋さん)、ブーランジュリー(パン屋さん)、スーパーでそれぞれ特徴があります。
スーパーマーケットのガレット・デ・ロワ
スーパーマーケットのケーキ売り場でも見かけることができます。
スーパーだからって侮る事なかれ、結構おいしいんです。フランスではマーガリンをお菓子に使うことはほぼなく、スーパーのケーキでもしっかりバターが使われていることが多いです。そのため、温めて食べるとしっかりバターの香りと風味がします。
パティスリー(お菓子屋さんの)ガレット・デ・ロワ
パティスリーに並んでいるガレット・デ・ロワはちょっと上品な感じで並んでいるんです。表面のデザインも手の込んだものが多くて、表面のパイ生地が盛り上がってなく薄く焼けているのも特徴です。
ブーランジュリー(パン屋さん)のガレット・デ・ロワ
パン屋さんのガレット・デ・ロワはお菓子屋さんのものよりだいぶダイナミックな形になっています。
わたしはパン屋さんのガレット・デ・ロワがいちばん好きです。パン屋さんのは生地がざくざくしてて、中のアーモンドクリームよりもパイ生地のほうが多めなので、わたしの好みです。
表面のデザインも大雑把に作っているところも人間味が溢れてて、このテキトーさ好きです。
今年のガレット・デ・ロワは、表面のデザインや生地の厚さなどにも注目して、選んでみてはいかがでしょうか。
Bon appétit !
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