ビスキュイが誕生するまでの話
ビスキュイ Biscuit という食べものは古代エジプトの時代にはすでに消費されていました。
もちろん当時にはスプーンは存在していませんので、「スプーン」と名前が付けられるのはずいぶん後です。
スプーンは中世の頃にはすでに存在しており、16世紀のカトリーヌ・ド・メディシスの時代にはすでにスプーン型のビスキュイが作られました。
でも、わたしたちの知っている細長い形ではなく、丸いひし形をしていました。この時代のスプーンが丸いひし形の形だったからです。
19世紀、ナポレオン1世の外務大臣をつとめ、たいへんな美食家でもあったタレーラン Charles-Maurice de Talleyrand-Périgord はアントニン・カレーム Antonin Carême という腕のいい料理人を雇っていました。
タレーランはマデイラワインのグラスにビスキュイを漬けて食べたらさらにおいしくなるのではないかと思いつきました。そこで、彼はビスキュイをワイングラスに浸せる形に変えてほしいとカレームに頼みました。
カレームは細長い形のビスキュイを作ることを考案しました。
今では絞り袋を使って細長い生地を絞ることができますが、当時は絞り袋は発明されていませんでした。ただ、その頃の技術発展により、漏斗を使うことを考えつきました。カレームは皿の上に漏斗(じょうご)を引っかけ、その中に生地を入れ流しすことでまっすぐな生地を絞っていました。
その後、紐で作動させるような仕掛けで、生地を流しやすくするように改良しました。
そして、1847年に今も使われている絞り袋が発明されるまで、この漏斗を使った絞り器がつかわれていました。
ちなみに、絞り袋の先に取りつける口金はトロティエ Trottier という鍛冶屋が発明しました。絞り袋と口金は現在でもお菓子作りには欠かせない道具はこの頃に発明されました。
形が変わっても名前はそのままで「スプーン型のビスキュイ」と呼ばれています。当時のスプーンがすでに細長い今の形をしていたから名前を変えなかったのかもしれませんね。