ケイク・オ・フリュイができるまでのお話
ケイクCakeとは本来イギリスのお菓子のことで、このパウンドケーキのようなお菓子だけでなくお菓子全体のことを指します。
Cake という言葉は古代ノルウェー語の kaka から来ていた英語で、kaka とは フルーツケーキ(Fruit cake)やレーズンケーキ (Plum cake)を短縮した言葉です。
ケイク Cake は現在では小麦粉・バター・砂糖・卵がベースで果物などを加えて作りますが、シンプルな生地なので当然昔から作られている食べ物でした。
この生地の起源は古く、すでに古代エジプトからケイクに似た食べものを作っていました。同じような生地はギリシアやローマでも作られていました。材料は大麦・バター・卵・蜂蜜・ぶどうなどを材料にしていました。現在のケイクとは材料が少し異なり、形も違いますが、ケイクに似たような食べものは古代から作られていました。
17世紀に南西・西イングランドの小麦を作っている地域でケーキ(Cake)というお菓子が作られていました。最初はパン生地を作っていましたが、次第に果物とスパイスを加えパン生地を味わい深くし、パンのケーキ(Bread cake)と名付けていました。
その後、フランスにもこのお菓子が入ってきました。
作家であるアンヌ・ピエール・ロベールによると、フランスでケイク Cake という言葉が使われるようになったのは1795年といわれています。
その当時、小麦粉、卵、バター、砂糖をベースとして、ギリシアのコリントス産のレーズンと果物のコンフィが含まれているお菓子のことを指していました。レーズンを加えていたため、プラムケイク Plum cakeと呼ばれていました。
レシピの変化
1900年に出版された本( Mémorial historique et géographique de la pâtisserie )に実際に作られていたプラムケイクのレシピが書かれています。
材料は酵母を使ったパン生地がベースで、バター・砂糖・卵・牛乳・レーズン、レモンコンフィのみじん切りを加えて、ギリシャのコリントス産とトルコのシミルヌ(現イズミール)産のレーズンでした。作りかたは混ぜ合わせた生地をシャルロットの型に入れて、翌日まで寝かしておき、オーブンで焼き色がつくまで焼きます。
19世紀の有名なパティシエであるジュール・ゴッフェ氏 Joules Gouffé は小さく切ったオレンジとレモンコンフィを混ぜていました。
このレシピは以前は酵母を使っていましたが、1891年にベーキングパウダーが発明されたことにより酵母を使わなくなっていきました。これが現在わたしたちが知っているケイクと同じで、20世紀の初めにはすでに一般家庭に日常的に存在していたといわれています。
ケイクの名前の変化
それまではプラムケイクと呼ばれていましたが、レーズンだけでなくほかの果物も加えるようになったことから、1970年代にケイク・オ・フリュイ Cake aux fruits confits と呼ばれるようになりました。ケイク・オ・フリュイ・コンフィとは「果物のケイク」といい、砂糖に漬けたドライフルーツを混ぜたケイクのことです。
さらには果物を加えないバージョンもでき、ガトー・ド・ボヤジュ Gâteau de voyage「旅のお菓子」と呼ばれました。ガトー・ド・ボヤジュとは焼き菓子やビスケットなどの保存がきき、持ち運びしやすいお菓子のことで、旅行に持っていけることからこの名前が付けられました。
フランスでのケイクの流行
フランスでケイクがはじめて流行ったのは19世紀後半でした。
1870年頃、パリのマドレーヌ寺院のある地区にいくつかのパティスリーがあり、有名なのはミシェル、ゲール、マリオンの3店舗でした。
ミシェルは1830年にロンドンから来てリュクサンブール通り(rue Luxembourg、現在はカンボン通りrue cambon)に店を構えていました。彼はベーキングパウダーでふくらませたケイクを作り、評判を得ていました。
マリオンはマドレーヌ寺院の正面の通りのロワイヤル通り(rue Royale)に開店し、プラムケイクを流行らせました。
1990年〜2000年の間はケイクはあまり流行らず、再びケイクが注目されるようになるのは2010年代に入ってからです。つまり、現在フランスではケイクが流行しており、ケイクを販売しているパティスリーやさまざまなフレーバーのケイクを提供するカフェも増えています。
また、加える具材により味の変化ができるし、作るのも簡単なので、今では家庭では定番のお菓子になっています。
さらに、甘いだけお菓子としてでなく、野菜やオリーブ、ハムなどを具材にしたケイク・サレCake saléというアペリティフになるケイクも登場しています。
こちらはトレトゥールTraiteurという総菜屋で販売していたり、簡単なので家でも作ることもあります。