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フランスの行事とお菓子のあまい関係

フランスの行事とお菓子のあまい関係

お菓子と季節の行事はとても密接な関係があります。行事ごとに食べるお菓子があり、その時期が近づくと街中がお菓子でいっぱいになります。また、フランス各地で由来は同じだけど、異なるお菓子があることもポイントです。

12月から4月にかけては怒濤のお菓子の日ラッシュが始まります。それが終わった5月の行事から紹介していきます。

5月1日 スズランの日 – Fête du muguet

スズランの日は Fête du muguet フェット・デュ・ミュゲ と呼ばれています。Muguet はスズランという意味です。スズランは春が来たことを知らせる花で、古代より春のシンボルで、幸せを呼ぶ花とされていました。

1561年5月1日、シャルル9世は幸運をもたらすとして贈られたスズランをたいへん気に入りました。それから毎年同じ日にスズランをご婦人たちに贈るようになりました。

19世紀末になると、庶民もスズランを贈り合うようになりました。現在でも5月が近づくとスズランが街角に並び、愛する人にスズランを贈るという習慣が残っています。

このスズランの日に食べる特定のお菓子というものはありませんが、パティスリーにはスズランや春をイメージするお菓子やチョコレートが並びます。

これ以降、夏の時期はお菓子が関係するイベントはなく、いったん休憩となります。8月にはパティスリーもバカンスに入るところも出てきます。ただ、夏にはアイスクリーム屋さんが大繁盛しています。

10月31日 ハローウィン – Halloween

フランスのあまり有名でなかったハローウィンですが、最近では少しずつイベント化されてきています。一部のパティスリーでもハローウィンのディスプレイやお菓子がみられます。

ただ、かぼちゃ味のお菓子といったものはほとんど見られず、パッケージがハローウィン風のチョコレートやお菓子などが見られます。

11月1日 諸聖人の日 – Toussaint

諸聖人の日はフランス語でトゥサン Toussaint といい、日本語では「万聖節」といいます。トゥサンとはカトリックの聖人と殉教者を記念する日で、翌日の11月2日は死者の日となるので、お墓参りに行ったりします。

また、この11月1日前後にはフランスでは秋のバカンス時期となり、学校は2週間の休みに入り、それに伴い大人もバカンスを取ることがあります。

パリ近郊のプロヴァン Provins やセーヌ・エ・マルヌ Seine-et-Marne で生まれたニフィレット Niflette という小さなパイを食べる習慣があります。

11月末〜12月24日 アヴァン – Avent

アヴァン Avent とは「待降節」「降臨節」と書き、イエス・キリストの誕生を待ち望む期間のことです。アドベント Advent のほうが聞きなじみがあるかもしれません。

クリスマスはフランスの人々にとってとても大きな行事で、家族で集まってごちそうを食べます。楽しみにしているクリスマスを待つワクワクしている期間のことです。

10月末になるとすでに、クリスマスのプレゼントやお菓子がスーパーマーケットに並びはじめます。アドベントカレンダー Calendrier de l’Avent というクリスマスまでの日数をカウントするカレンダーで、日にちの窓を開けるとお菓子が入っています。毎日クリスマスを待ち望みながら、窓を開けてお菓子を食べ、すべての窓を開けるとクリスマスを迎えます。

フランスでもスーパーマーケットなどでアドベントカレンダーが販売されており、大きなパティスリーではオリジナルのカレンダーを作っているところもあります。

12月6日 聖人ニコラの日 – Saint-Nicolas

フランスの北東部で12月6日にサンタクロースのモデルになっている聖人ニコラ Saint-Nicolas を祝う伝統的な祭り。アルザスを中心とするフランス北東部だけでなく、ベルギー、ルクセンブルグ、ドイツ、オーストリア、スイスといった北ヨーロッパで祝われます。

昔、肉屋が3人の子供をバラバラに刻み塩漬けにしたが、その予兆を感じたニコラによって子供たちが復活したという伝説が元になっています。

それ以来、ニコラはこどもの守護聖人として崇められています。12月5日の夜から6日にかけて、子どもたちは成人ニコラのロバにえさを与えるために、長靴下に干し草とオート麦のパンをいっぱいに詰めて煙突にぶら下げました。これがクリスマスに枕元に靴下を置いておく習慣になっていきます。

4世紀には聖人ニコラの形を模したアニス風味のビスキュイやパンデピスで祝っていました。現在では聖人ニコラはチョコレートや赤いアイシングクリームで描かれることもあります。

アルザス地方ではマナラ Manala という人形の形をしたブリオッシュを食べて祝う習慣があります。

12月25日 クリスマス – Noël

クリスマスはフランス語でノエル Nöel といい、家族で集まって食事をする1年でもっとも大切なイベントです。12月に入ると話題はクリスマス級かのことばかりとなり、街中のディスプレイも華やかなものとなります。

クリスマスの定番のケーキは薪の形をしたビュッシュ・ド・ノエルが有名ですが、それだけでなくアントルメやタルトなどどんなケーキでもとても人気です。南フランスではトレーズ・デセールという甘く煮たフルーツやヌガーなど13種類のお菓子を食べる伝統もあります。

1月6日 エピファニー – Épiphanie

エピファニー Épiphanie は東方から来た三博士がイエス・キリストの生誕を世に知らしめた日。日本語では「公現祭」といわれます。最近は1月最初の日曜日がエピファニーの祝日にあたります。

ガレット・デ・ロワというアーモンドクリームを詰めたパイの中にフェーブを入れたお菓子を切り分けて、中にフェーブが入っている人がその日の王様・お姫様となるという習慣があります。

ガレットの中に入れるフェーブは昔はそら豆を使っていたため、フェーブ Fève といいますが、現在では陶器でできた小さな人形が主です。パティスリーによってフェーブのデザインが異なるため、コレクションする方も多いようです。

2月2日 シャンドルール – Chandeleur

シャンドルール Chandeleur とは「聖母マリアのお清めの日」を意味し、キリスト誕生の40日後に聖母マリアが清めのために神殿に詣でたことに由来しています。フランスではこの日にクレープを焼いて投げるという習慣があります。丸くて黄金色のクレープは太陽を象徴しており、春の到来を願って作られていました。

全国的にはクレープを食べるという習慣がありますが、パティスリーで買うというよりかは家で作って食べることがおおい行事です。南フランスのマルセイユではこの時期にナヴェットを食べる習慣があります。

クレープ Crêpe

シャンドルール Chandeleur – クレープを食べて幸せを願う日
2月2日はクレープを食べる習慣がありますが、なぜこの日にクレープを食べるようになったのでしょうか。

 

2月14日 ヴァレンタイン Saint-Valentin

3世紀、ローマ皇帝のクラウディウス2世の結婚禁止令を無視し、兵を結婚させた司祭ヴァランタンが処刑された日に由来します。

チョコレートを贈るという習慣はイギリスのカドバリー社がはじめました。フランスでは恋人やカップルが花やお菓子を贈り合うという習慣があります。チョコレートやお菓子の詰合せなどさまざまなお菓子がヴァレンタイン用として販売されています。

ただ、日本のように女性だけがチョコレートを贈るという習慣ではなく、カップルがお互いに贈り合っています。

2月〜4月 カルナヴァル – Carnaval

カーニヴァルのことで、日本語では「謝肉祭」と呼ばれ、ラテン語の caro(肉)が語源となっています。大地の恵みを祝った3月1日の祭りが起源となっています。

節食と肉を食べてはいけない期間となる四旬節の前にたくさん食べて大騒ぎしておこうというお祭りのこと。特に、四旬節のはじまる直前の日・月・火曜にあたる。このカルナヴァルはキリスト教と結びついてさらに盛り上がった行事となりました。

このカルナヴァルの間に食べられるのは生地を揚げたお菓子で、フランス各地になまえの異なる揚げ菓子があります。

  • フリヴォル Frivolles (揚げ菓子)
  • オレイエット Oreillettes (揚げ菓子)

マルディ・グラ – Mardi gras

フランスの行事とお菓子のあまい関係

マルディグラ Mardi gras は「豊かな火曜日」と言われ、カルナヴァルの最終日の火曜日にあたります。カルナヴァルの中でもこのマルディグラの日がもっとも盛り上がり、多いに飲み食いして、仮面をつけて踊ったりして楽しみます。

マルディグラが終わると節食の期間が始まるため、カルナヴァルからマルディグラまでの間にたくさん食べておくために油で揚げたエネルギーの高いお菓子を食べています。

カルナヴァルの最終日のマルディグラに食べるのも揚げ菓子です。

四旬節 Carême

四旬節とは、灰の水曜日から復活祭までの間の40日間の肉断ちと節食の期間のことをいいます。本来は46日間ですが、日曜日は休息日のためカウントしないため40日となります。

もともとは肉や卵を食べてはいけなかったが、中世以来、野菜や油、鴨肉、卵が許されるようになりました。この時期には肉は食べないのですが、野菜や魚などを衣をつけ揚げて食べていました。

肉は禁止されているがやっぱり力の入るもの、がっつりとしたものが食べたいっていう気持ちでしょうか、結構油っこいものを食べているなぁという印象。

  • ボトゥロ Bottreau
  • クロキニョル Croquignole
  • フリテレ Fritelle
  • グリーユ Guenille
  • トゥルティソ Tourtisseaux

フランスの揚げ菓子の種類いろいろ

フランスの揚げ菓子の種類いろいろ

フランスにある揚げ菓子ぜんぶまとめました

 

 

ちなみに、昔日本に来たポルトガル人がこの時期に揚げ物を食べていたのが元になり、天ぷらが日本にも広まったと言われています。

復活祭 – Pâques

フランスの行事とお菓子のあまい関係

復活祭は毎年日程が異なる移動祝日であり、四旬節がはじまって40日後の春分後の最初の満月の次の日曜日におこなわれます。

弟子のひとりに裏切られ十字架にかけられて処刑されたキリストが、3日後に復活したのを祝う日。キリスト教の行事の中でもっとも重要な祭日で、冬から春へと変わる季節を祝います。卵は生命の誕生、うさぎは子供をたくさん産むため豊かな生命の象徴とされます。

四旬節でしっかりと揚げものを食べてきたので、もう揚げ物は飽き飽き…。揚げ菓子は復活祭にはあらわれません。そのかわり四旬節のあいだに貯まった卵を消費するために、卵をつかったケーキを作ります。余った卵の殻は装飾して飾ったりします。

現在では卵やうさぎ、ヤギの形をしたチョコレートが定番でパティスリーやスーパーにたくさん並んでいます。さらに、最近では子供が好きそうなキャラクターや職業、動物などの形をしたチョコレートが作られています。この時期はどのパティスリーやショコラティエでは大量のチョコレートを作るため大忙しです。

また、アルザス地方ではアニョー・パスカルという羊の形をしたお菓子を食べる習慣があります。

5月〜6月 精霊降臨祭 Pentecôte

復活祭の7週間後の日曜日、キリストが復活天昇のあと、弟子たち(十二使徒)のもとへ精霊が降りたことに由来する祭り。精霊を象徴する白いハトをモチーフとしたコロンビエというお菓子がみられる。コロンビエとは「鳩小屋」の意味。

ただ、このお祭りはあまり有名なものではなく、コロンビエやお祭りを祝うお菓子などもあまり販売されていません。

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