チョコレートの原料はカカオ豆ですが、カカオ豆がどのようにしてチョコレートになっていくのでしょうか。今回は、カカオ豆がチョコレートになるまでの製造工程を説明します。
書かれているアルファベットはフランス語です。フランスの専門書を参考にして説明しています。
カカオ豆が採れるまで
カカオの樹は高温多湿の熱帯で育ちますが、かなり条件が限定されます。カカオベルトと呼ばれる地域で、高度30〜300mで、年間平均気温が約27℃で気温差が小さく、年間降水量は1000mm以上であることというように細かい条件を満たした地域でのみカカオが育ちます。
これらの細かい条件を満たすのは、中南米、西アフリカ、東南アジアです。
では、カカオの実ができて、カカオ豆ができるまでの行程をみていきます。
収穫 récolte
まずは、カカオの樹からカカオの実ができるまでです。カカオの樹はフランス語で Cacaoyer といいます。
カカオの樹は大人の木になると高さ6〜7m、幹の太さは10〜20cmまで大きくなります。苗から育てた場合、3〜4年目から実を結びます。
カカオの葉は風に弱く、直射日光を好まないため日陰樹(シェードツリー)を必要とします。日陰樹とは直射日光から木を守るために、日陰になる木のことです。カカオは細かい条件がそろわないと育たないし、カカオの樹も弱いし、カカオ豆ができるまでもなかなか繊細です。
カカオの樹は枝先や幹の太いところに花をつけ、一年中咲きます。花の大きさは1cmくらいで、樹の種類によって白、ピンク、バラ色、黄、赤など色が異なります。
花が受粉すると約6ヶ月後に結実します。この実のことをフランス語ではカボス Cabosse といいます。英語ではカカオポットといいます。
カカオ豆を取り出す Écabossage
カカオの実 Cabosse は年に2回収穫できます。実は長さ15〜20cm、直径7〜15cm、重さは300〜500gのラグビーボール型をしています。
一本の樹に平均20〜30個の実がつき、色は緑、黄、オレンジ色など種類によって異なります。
カカオの実は、1cmの厚さの堅い殻に覆われていて、その中に白くぬるぬるした甘酸っぱい果肉(パルプ)がカカオ豆 Fève de cacao を囲んでいて、中には平均40粒のカカオ豆が入っています。
カカオの実を収穫して3日後にカカオ豆をパルプごと取り出します。
発酵 Fermentation
カカオの実からカカオ豆をパルプごと一緒に取り出したものを木箱やバナナの葉に覆い、そのまま5〜7日間放置します。放置しておくと、高温多湿の環境と微生物の働きによって発酵がすすんでいきます。
白いパルプは微生物の働きにより、液化して消滅します。カカオ豆は化学変化によりチョコレート色に変化していき、独特の香りを放ちます。
乾燥 Sèchage
発酵直後のカカオ豆は40%以上の水分を含んでいます。
このままでは保存に適さないため、天日や機械によってカカオ豆を乾燥させ、水分を7〜8%まで減らします。
ここでカカオ豆の名前がつけられます。
貯蔵 Stockage
乾燥させたカカオ豆は麻袋に入れ、倉庫に保存します。加工する工場に運ばれるまでは倉庫で保管されます。
ここまでが、カカオを生産した国でやれることです。
カカオ豆の加工
その後、カカオ豆はチョコレートへ加工できる国まで運ばれます。ほとんどの生産国では、カカオ豆をチョコレートに製造することはしていません。ですので、遠くの国まで運ばれていきます。
焙煎 Torréfection
カカオ豆を平均150℃の熱を加えて焙煎し、香りと風味を引き出します。
チョコレートの香気は焙煎によってきまり、その香りの成分は1000種類以上あることが分かっています。例えば、フルーツ、バナナ、ピーナッツ、ローストなどをはじめ、マッシュルーム、パプリカ、金属、硫黄といった香りまであります。
焙煎する時間や温度によって、チョコレートの味わいは大きく異なってきます。
例えば、高温深煎りでローストすると、苦みとコクがあり、深い味わいがでてきます。一方、低温浅煎りローストであれば、華やかな香りとフルーティな味わいが出てきます。
また、カカオ豆には微生物も含まれているため、同時に殺菌もおこないます。
皮を取り除く Décorticage
カカオ豆を粗く砕いて、殻などを取り除き、カカオ豆からカカオニブ Grué de cacao を取り出します。
すりつぶす Concassage
カカオ豆から取り出したカカオニブを細かくすりつぶし、ペースト状のカカオマスにします。カカオマスは固体ですが、含まれているココアバターという油脂により、粘度のある液体になります。
カカオマスとは?
カカオ豆を砕いて種皮を取り除いたものをカカオニブといい、それをすりつぶしたものをカカオマスといいます。カカオニブにはカカオバターが平均55%含まれているので、カカオマスを粉砕して練るとカカオバターが出てきてペースト状になります。
このカカオマスにカカオバターや砂糖、乳製品などの材料を比べて練ったものがチョコレートとなります。
ここまでが、カカオ豆の加工で、このあとにチョコレートを製造していきます。
チョコレートができるまで
混ぜ合わせる Mélange
まずは、カカオマス、砂糖、カカオバター、乳製品などチョコレートの材料を混ぜ合わせます。
微細化 Broyage
材料を合わせた生地をさらに細かくしていきます。チョコレートの粒は20ミクロン以下にしていきます。
ミクロン(μ)とは、1mmの1000分の1の大きさ。人間の舌は20ミクロン以下の物質を粒として感知できません。
チョコレートはこのくらい小さくするので、舌触りがなめらかになります。
精練 Conchage
つぎは、チョコレートを強力な力で長時間練っていきます。練っていくことで、硬い粘土状からやわらかい粘土状になります。練ることにより、口どけのよいチョコレート生地になります。
チョコレート生地を長時間練る作業のことを精錬(コンチング)といいます。19世紀に固形のチョコレートが発明された際に、この装置の形状が巻貝の一種であるコンチ貝に似ていたことから、この機械のことをコンチェと呼んでいたことに由来します。
この作業でチョコレート生地が完成します。
温度調整 Témpérage
できあがったチョコレート生地は、冷やし固める前に温度調整をおこないます。
温度調整をおこなうことで、艶があり口どけのよいチョコレートになります。もともと不安定な形をしているカカオバターを安定した結晶にしていきます。
充填 Moulage
充填とは型にチョコレート生地を流し込むことのことです。温度調整したチョコレート生地を型に入れ、冷やし固めます。
その後、型抜きをして、チョコレートのできあがりです。
チョコレートができるまでには、赤道近くの国で栽培されたカカオ豆を発酵させ、工場へ輸送し、いくつかの機械を使って加工して、温度調整をして、ようやくわたしたちが食べているチョコレートができあがります。
気軽に食べているチョコレートですが、ものすごい期間と手間をかけて作られているんですね。
今回は、カカオ豆の栽培からチョコレートができるまでの製造工程を紹介しました。ぜひ、参考にしてみてください。
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