今回は、前々から温めていた企画、リヨンのパティシエにインタビューをする!というもの。
リヨンは美食の街として有名で、レストランはもちろんのこと美味しいパティスリーもたくさんあります。ただ、世界的にも有名なショコラトリーであるベルナションの知名度はあるのですが、ほかのパティスリーに関しては情報が乏しいなぁと思ってました。リヨンの美味しいパティスリーをもっと知ってほしいなぁという思いで、パティシエの方のインタビューをさせていただきました。
今回は以前から常連のように通っているデリス・デ・サンス Délice des sens のオーナーパティシエであるロマリック・ボワレイ氏です。
デリス・デ・サンスのオーナーパティシエ ロマリック・ボワレイ氏
ボワレイ氏はデリス・デ・サンスのオーナーであり、パティシエでもあります。
彼は2005年にリヨンの6区にデリス・デ・サンスをオープンさせ、その後、チョコレート専門店やポールボキューズ市場内にも店舗をオープンさせ、リヨン市内にに3店舗のパティスリーを構えてているオーナーさんです。
パティスリーに対する想いや仕事に対する姿勢についてお話を聞かせていただきました。
お菓子を作る仕事以外考えたことがなかった
kico:「フランスでは16歳と若い年齢で職人の仕事を選択すると言いますが、職人の仕事は多数ありますが、なぜパティシエという仕事を選んだのですか」
ボワレイ氏:「わたしは16歳からパティシエの学校に通い始めました。両親もパティシエで毎日お菓子を作っていました。わたしも小さいころからお菓子を家で作っていました。
そのころからパティシエになることは決めていました。お菓子を作ることや食や材料についてももっと知りたいという情熱を持っていましたので、パティシエになるということは自然なことでしたし、ほかの職業は考えたこともなかった。
学校卒業後は南仏エクサン・プロヴァンスやヴァランスなどのパティスリーで修行をしました。」
kico:「その後、2001年にパティスリー世界大会(Coupe du monde de la pâtisserie)のメンバーに選出され、2004年にはMOFのファイナリストに選ばれました。フランスには多くの優秀なパティシエがいますが、あなたはその中でも優れたキャリアを進んで来ていらっしゃいます。他のパティシエとの違いはどこにあるのでしょうか。」
ボワレイ氏:「難しい質問ですね(笑)わたしはほかのパティシエに比べるとお菓子に対する情熱を持っていたということは確実にいえます。先ほども言いましたが、わたしは小さい頃から情熱を持ってお菓子を作っていた。お菓子を作ること、食べることが好きだったんだ。そこの違いではないかと思っている。」
kico:「難しい質問に答えていただき、ありがとうございます。フランスにはたくさんのパティシエがいて、美味しいパティスリーもたくさんあります。その中でも美味しく美しいパティスリーを作れるパティシエにはなにか大きな情熱を秘めているのではないかと思っていました。」
リヨンは美食の街だからこそ勝負したかった
kico:「どうしてリヨンでパティスリーを開店したのですか。」
ボワレイ氏:「わたしはブルゴーニュのジュラ県の出身のためリヨン生まれではありません。パティシエになってからはさまざまな町で働いてきて、リヨンもそのひとつです。ガストロノミー(美食)の街であるリヨンでパティスリーを持って勝負してみたかったんだ。
特に、店舗を構えている6区というエリアは企業が多くあり、ビジネスマンや住民など美味しいものに慣れ親しんでいるお客が多いエリアでもある。そこで開店できることはチャンスだと思った。」
ほとんどの材料はお店で完全手作り
kico:「デリス・デ・サンスのお菓子は半分以上食べていますが、素材の味がとても強く感じます。パティスリーを作る際にこだわっていることはありますか。」
ボワレイ氏:「デリス・デ・サンスのパティスリーの基本となる生地やソースなどのベースはすべて店で手作りをしているんだ。クリーム系はもちろん、プラリネ、ナパージュ、ソースやペーストなどはもちろん材料から作っている。フォンダンなどどうしても作るのが困難なもの以外の98%は手作りしている。
例えば、クリーム系は牛乳から作るし、フルーツソースは果物から加工している。手作りすると保存は利かないから、新鮮なうちに使っている。よい素材を使ってよいものを作ることを心がけている。うちでは既製品なんて使っていないんだ。」
フランスは菓子が盛んな国なので、ペーストやソースなどほとんどすべてのお菓子のベースとなる材料はメーカーがあらかじめ作った既製品がたくさんあります。しかも、かなりレベルの高い既製品でその既製品自体でもかなり美味しいんです。フランスのパティスリーでは普通にこういった既製品を使用しています。
ソースなどをベースをパティスリーで作るのは時間も手間もかかるし大変な作業です。フランスでは労働時間の上限が法律で厳しく決まっているため、手間や時間がかかるものを作るとなるとパティシエの人数を増やさなくてはいけません。そのため、多くのパティスリーでは多少の既製品を使っているところも少なくありません。
また、既製品でも十分に美味しい商品なのですが、多少の添加物は入っていますし、作り立てといった新鮮さも劣ります。
それをほとんどすべて手作りしているなんて、かなりの驚きです。
しかし、手作りをすることで新鮮で素材の味が強く美味しいパティスリーになります。
お客さんが喜んでくれることだけを考えている
kico:「わたしはデリス・デ・サンスのタルト・オ・シトロンが大好きなのですが、美味しさもさることながら、その大きさにびっくりしてしまいました。デリス・デ・サンスのケーキはほかのパティスリーに比べるとサイズが大きめですが、なにかこだわりがあるのですか。」
ボワレイ氏:「たしかに、わたしのケーキは大きいですね。でも、大きいケーキだと嬉しいでしょう?
ケーキを買う時、家でケーキの箱を開けた時、大きいケーキを見たら嬉しいと思うんだ。
食べきれなければ、翌日に食べたっていいし、楽しみが増えるでしょう。大きいケーキにしているのは、お客さんに喜んでもらいたい、それだけなんだ。」
タルト・オ・シトロンの大きさは「リヨンのパティスリー|フランスで一番大きな?タルト・オ・シトロン」の記事をご覧ください。
全てのことに感謝の気持ちをもつ
kico:「パティシエの仕事をするにあたり、一番大切にしていることはなんですか。」
ボワレイ氏:「すべてのことがこの仕事にとって大切なことです。ひとつだけあげるとすれば、すべてに対して敬意をもって接しているということ。例えば、一緒に働いているパティシエにはひとつひとつの作業は丁寧に神経を集中させて行うように指導しているし、全員その気持ちを持たせている。雑に材料や生地を扱ってはならない。
また、人だけではなく、果物などの材料や道具も丁寧に扱う気持ちをもつようにしている。例えば、今の季節はいちごをよく使うが、それを作っている農家にも感謝の気持ちを持っている。そういう気持ちをもっていると、いちごを雑に扱うことはできない。いちごをどう加工したら一番おいしくなるのかを常に考えているんだ。果物ひとつでも大切に扱っている。
すべての農産物や材料に尊敬の気持ちを持って仕事をしている。」
インタビューを終えて
お話を伺ううちにパティスリーに対する情熱をたんたんと語るボワレイ氏でしたが、その情熱はとても伝わってきました。その情熱に負けないように、わたしもリヨンのパティスリーをもっと日本へ伝えていきたい!と思っています。
シェフパティシエとシェフショコラティエにもインタビューさせていただきましたが、オーナーであるボワレイ氏と同じ気持ちを共有していました。お客さんに喜んでいただけるために大きいケーキを作っている理由、すべてを手作りする理由、仕事をする上で大切にしていることなどの質問は、すべてオーナーと同じ答えでした。
パティシエ全員にオーナーと同じ考えを共有するというのは、簡単そうで実際できるのは難しいことです。それを共有できているパティスリーのお菓子はやっぱり美味しくなるんだなぁと納得しました。
ぜひ、リヨンに来たら訪れてほしいパティスリーです。
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