エクレアが誕生するまでのお話
じつは、エクレアはもともとは全く別のお菓子でした。
19世紀はじめ、カレームは公爵夫人のパン pain à la duchesse というお菓子を作っていました。La duchesse とは「公爵夫人」という意味しています。
細長いパンの横に切り込みを入れ、杏のマーマレード、桃かグロゼイユのジュレを詰めていました。
カスタードクリームなどのクリームが誕生する前は果物の砂糖煮をお菓子の具材にするのが定番でした。
さらに、彼はチョコレートの小さいパン petits pains au chocolat のレシピも考案しました。これはパンの中身にチョコレートのクレームパティシエールを詰め、チョコレートでグラサージュしているお菓子でした。
19世紀の有名なパティシエジュール・ゴッフェ Jules Gouffé によると、「長さ8cmで幅2cmのパンに冷たいコーヒーで表面をグラサージュし、パンの端に穴をあけ、コーヒー味のシャンティイ(泡立てた生クリーム)を絞る」というレシピを記しています。
当時はシュー生地ではなくパンを使用していました。おそらくブリオッシュ生地ではないでしょうか。
19世紀末にパン生地からシュー生地に変わりました。
当時のレシピは長さ10cmに絞ったシュー生地を焼き、エクレール用のクリームを中に詰めていました。
そのクリームは、卵と砂糖で作ったクレームパティシエールのことで、それに刻んだチョコレートを加えたり、コーヒーエッセンスで香りをつけたものとされています。今のクリームとさほどかわりがないですね。
1870年くらいに、突然、「公爵夫人のパン」から「エクレア」と名前が変わりました。
ただ、なぜエクレールという名前がつけられたのかというのははっきりとした説はなく、ナゾなままです。な
名前の由来は表面のフォンダンが光って稲妻のように光っているため、中のクリームが飛び出ないうちに稲妻のようにすばやく食べなければならないからなどと様々な説があります。
エクレールというシンプルで発音しやすい言葉だったから、日本でも流行ったのかもしれませんね。もし、昔のまま「パン・ア・ラ・デュシェス pain à la duchesse 」だと発音が難しすぎて、ここまで広まらなかったかもしれないですね。